出口治明さんの【人生を面白くする 本物の教養】という本を紹介します。
教養に興味がある方や、教養=知識?美術、音楽、歴史…?と迷走している方にぜひ読んでいただきたいです。
自分の頭で考える
教養の本質は、「自分の頭で考える」ことにあります。
教養を身に付けるにはある程度の知識が必要ですが、知識はあくまでも道具であって手段にすぎません。「知っている」だけでは不十分であり、知識を素材として「自分の頭で考える」ことが教養なのです。
また、「自分の頭で考える」際のバロメーターとして、「腑に落ちる」という感覚が挙げられます。
誰かの話を聞いて、本を読んで、自分の頭で考えて本当にその通りだと腹の底から思えるかどうかが大切なのです。
私もこの感覚は大切にしていて、本当に腹落ちしたことは確実に自分の力になっていると感じています。
国語ではなく算数で考える
物事を考えるときには、「国語(定性的)ではなく算数(定量的)で」考えるという視点が重要です。
定性的:主観的な判断や観察に基づく情報を扱う
定量的:数値で表現できる情報を扱う(客観的な測定が可能)
定性的な視点だけでは、筋道が成り立ちさえすればどんな理屈でも言えてしまうという一面があります。そこに定量的な視点を加えることで、物事をより正確に把握することができます。
物事を考える際には理屈だけではなく、常に数字を参照して考えることが大切です。
この本では、例として「税金の無駄遣いをなくせば消費税を上げなくてもすむ」という意見を取り上げています。理屈として成り立っているこの意見を数字を用いて簡単に計算することで、現実的に実現可能かどうか考えていく過程にはとても興味深いものがあります。
自分に都合が良くて耳障りの良い意見は、深く考えずに受け入れたくなる気持ちも分かります。
しかし、一歩踏み込んで数字で考えることが教養人になるための第一歩なのではないでしょうか。声が大きい方に賛同するだけの人に、自分軸や教養を感じる人はいないと思います。
余談ですが、私は「国語ではなく算数で考える」視点を意識するようになってから、選挙ポスターを見るのが楽しくなりました。
本の内容を血肉化する
知識を蓄えるためには読書も有効ですが、ただ文章を目で追えば良いというわけではありません。
読み返す
あれもこれも!早く読み終えたい!とスピード重視で本を読んでしまうと、読み終わった直後なのに「何が書いてあったかよく思い出せない・説明できない」ことってありませんか?
本の内容を血肉化するためには、「読んでいて分からないところが出てきたら、腑に落ちるまで何度も同じ部分を読み返す」ことが近道だそうです。
私は2日で約1冊読めるタイプだったのですが、本の内容をうまく思い出せないこともしばしばありました。スピードを気にすることをやめてじっくり読み返すことを意識してからは、本から得られる情報が多くなったように感じています。
速読
効率的な読書術として紹介されることも多い速読ですが、著者は百害あって一利なしと言っています。急ごしらえの読書では内容が血肉化されず、結局読んだ意味がありません。
本を読むスピードを上げる最も効率的な方法は、本をたくさん読むことだそうです。
人名や用語などの知識の蓄積があるほど、つまづかずに読み進めることができるからです。
本を読むのにかかる時間は、その人の知識量で決まってくるものであり、単純に目で文字を追う速度とは違うのです。
(出口治明さん「人生を面白くする 本物の教養」,幻冬舎,2015年9月,105ページ)
教養の本質を知ろう
以前は、教養を身に付けるためにはたくさんの知識を「知っている」ことが重要だと思っていました。この本を読んで、「知っている」だけでは不十分で、その知識を基に「自分の頭で考える」ことが何よりも重要だということに気が付かされました。
教養という言葉に無条件に惹かれてしまっていた私が、しっかりと教養の本質を知ることができた本です。また、著者の豊富な話題はとても面白く、私も身の回りの問題(例えば職場の会議室の適正数など)について考えるきっかけとなりました。
私と同じように教養に興味がある方は、手あたり次第に知識をつけようと行動する前に、まず【人生を面白くする 本物の教養】を読んでみてはいかがでしょうか。
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