今回は、ハーバード大学の心理学者、ダニエル・ギルバートさんの著書『明日の幸せを科学する』(改題文庫化前ver → 『幸せはいつもちょっと先にある』)について、私の心を揺さぶったポイントを交えながらご紹介します。
この本は、「人はなぜ幸福になれないのか?」という問いを心理学・脳科学・行動経済学・哲学の視点からユーモラスに解き明かし、私たちが未来の幸福をいかに正確に予測できていないかを教えてくれる一冊です。
行動する勇気がもらえるのはもちろんのこと、著者の軽妙な語り口が面白く、思わず「えぇ⁉」と驚いて笑わずにはいられない!誰かに話したくなる本No.1です。
心を守る心理的免疫システム
私が心を揺さぶられたのは、「心理的免疫システム」という考え方でした。
身体が病原菌から身を守るように、私たちの心にも、不幸という脅威から自分を守るための防御システムが備わっているというのです。
何か嫌なことが起きたときでも、いつの間にかそれを受け入れて前に進むことができていた、なんて経験はありませんか?
これは、私たちの心を健やかな状態に保てるように、この「心理的免疫システム」が無意識のうちに作動してくれているからなのだそうです。
「やらない後悔」より「やる後悔」を選びたくなる理由
やったことよりやらなかったことを後悔する理由の一つは、心理的免疫システムにとって、やらなかったことを明るい見方でとらえることが難しいからです。
何かをやった結果が芳しくなかった場合であっても、その経験からどれだけのことを学んだか考えれば自分を慰めることができますが、やらなかった経験からは学ぼうにも経験自体がないので自分を慰めることができません。
例えば、「あの時、告白しておけばよかった」という「やらない後悔」は、美化された記憶の中でいつまでも残り続けます。一方で、「告白して振られた」という「やった後悔」は、失敗から学び、次の行動へと繋がる経験になります。
心理的免疫システムには、いきすぎた勇気のほうが正当化しやすいのです。
「ひどく嫌な経験」のほうが立ち直りやすい?
この心理的免疫システムには、さらに驚くべき性質があります。それは、身体の免疫システムと同様に、「決定的な閾値を超えた脅威」にしか反応しないということです。
例えば、離婚や失業は幸せに対する大規模な攻撃の一種であるため、心理的免疫システムを作動させる引き金となります。しかし、電車で足を踏まれたりエレベーターが遅かったりするくらいのちょっとした嫌な出来事では、システムは作動しません。
朝から足を踏まれるとイライラするかもしれませんが、心理面の健康にとっては深刻な脅威ではないからです。
つまり、ひどく嫌な経験よりちょっと嫌な経験のほうが明るい見方をしづらいということになります。
上述した事実は直感に反するため、未来の感情を予測することを難しくしてしまうのです。
未来の幸せをより正確に想像するために
では、どうすればより良い未来を想像できるのでしょうか?
著者は、未来の自分を想像する際は、「今」の感情や状況に強く影響されてしまうと指摘しています。そのため、自分の頭の中だけで未来を予測するのではなく、すでに同じ経験をした「他者」の声に耳を傾けることを勧めています。
たとえば、新しい仕事に挑戦しようと迷っているなら、すでにその仕事に就いている人の話を聞いてみる。旅行先の満足度を知りたいなら、実際にそこに行った人の感想を聞いてみる。そうすることで、理想ばかりではない、より現実的な未来の姿が見えてくるはずです。
にわかには信じがたいかもしれませんが、私たちは想像するよりもずっと似たような感情を持つ生き物であり、他者の経験は最も確実な未来の指標になるのです。
行動できる自分に変わる
自己紹介記事にも書いている通り、私はネガティブで心配症です。そんな私にとって心理的免疫システムの話は衝撃的で、この本は時間を置いて2回、じっくりと読みました。
今まではなかなか行動に移せないことが多かったのですが、「やらない後悔よりやる後悔のほうが小さい!」とこの話を思い出すことで、勇気を出して行動できるようになりました。
物事の決断スピードが速くなってきたと思います。
私と同じようになかなか行動できずに後悔した経験のある方は、ぜひ【明日の幸せを科学する】を読んで、未来を恐れずに行動できる自分に変わってみませんか?
この本は、「やらない後悔」をなくしたいあなたの支えとなってくれるはずです。

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